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2006年05月03日

Songs From the Capeman その1

ザ・ケープマン/ポール・サイモン
ザ・ケープマン/ポール・サイモン

ポール・サイモンの待望のニュー・アルバムサプライズがまもなくリリースされます。日本版は5月24日輸入版は5月9日にそれぞれ発売されるのでこの際予約してしまって(笑)、ちょっとその前にいろいろ復習しておきましょう。で、この作品なんですが、素晴らしい音楽性とストーリー性を持った大傑作アルバムだと思うのです。が、なぜあんまり話題に上がらないんですかねぇ。

自作のミュージカルからの曲を彼自身がレコーディングしたもの。歌唱が素晴らしい。早口の語りやブルックリン訛りでのダイアログ。ラテンのギターとピアノをちりばめ、アメリカンフォークやドゥーワップを織り交ぜます。カリブの海岸を思わせる明るい曲や、アップテンポでストレートなラブソングなどと同時に、かなり辛口な曲も織り交ぜながら、後に「殺人鬼ケープマン」として知られる少年の物語をつづっていきます。ポールがそれまでにやってきたアフリカ音楽やブラジル音楽の経験が生かされ、さらに素晴らしいラテン・エスニックアルバムを生み出したと言っていいでしょう。

このアルバムに関してはポールが出演したアメリカのVH1の「Storytellers」でのパフォーマンスと語りが秀逸ですのでその内容をとともにアルバムを紹介していきましょう。

この番組はアーティストが自分のキャリアや楽曲に関して丁寧に説明しながら演奏をしていく番組で、ここからジョニー・キャッシュとウィリーネルソンリンゴ・スターらの放送がCDとしてリリースされているようで、ポール・サイモンの回もリリースされてもいいのになぁと思います。

ポールもリラックスしてとてもいい雰囲気の番組です。まずポール・サイモンクラシックスをいくつか演奏して和やかな観客との一体感。ボクサーを演奏するくだりでは、「この曲を歌いだすところで拍手がおきるから、それを待つためにわざわざ小節を付け足したんだよ」と笑いを誘い、「じゃあ今度は拍手無しでやってみようか」といってやり直したところで困惑の表情を浮かべて演奏するポールはお茶目。「拍手がないと次の歌詞が思い出せないよ!」って。

しかしアフリカ音楽にかかわってきたくだりを述べるところで表情は一変。グレイスランドツアーでの緊張感について語るポール。Gracelandという歴史的金字塔を打ち立てた裏で、ポールは当時「アパルトヘイトに対抗するための国連の隔離政策を裏切った」だとか、「黒人の文化を盗んだ」だとかさんざん理不尽な批判にさらされたわけですが、その頃の「ポール・サイモンは適切に罰せられるべきだ」という批判記事を引き合いに出して、「いったい今のジンバブエで『適切に罰する』とはなんなんだろう?ってヒュー・マセケラに言ったんだよ」と振り返ります。こころなしか、このあとのグレイスランドの演奏が神妙に聞こえます。

「1959年、ニューヨーク46番街で少年が殺人を犯した。」ポールはいよいよ、ケープマンの物語を語ります。「16歳の少年が二人殺され、殺人者も16歳、それが黒いケープを着ていたことからケープマンと呼ばれたサルバドール・アグロン、共犯者は傘を持っていたことからアンブレラ・マンと呼ばれた。」ポールは淡々とこの物語の背景を語ります。

「彼は最年少で電気椅子送りを宣告されました。のちにロックフェラー知事の働きかけで終身刑に減刑されましたが。この歌は彼が裁判所に向かい、その宣告を受けるために拘置所を出るところを歌った歌です。」そして、アルバム一曲目に収録されたAdios Hermanosが歌われます。ミュージカルのキャストを従え、ポールのボーカルは心にぐさりと突き刺さるほど冷酷でしかし力強い。きっと大丈夫だと励ましてくれる拘置所の仲間に別れを告げ、人種差別に耐えて必死に祈るヒスパニックの人々の願いむなしく、権力やマスコミを含めたニューヨーク白人社会は簡単に死刑宣告を決定し、伝える。ほぼアカペラの曲ですが、オルガンの音色だけが祈りのように響きます。さようなら、仲間たちよ。さようなら。

なんだか最近テレビ番組でこの曲をBGMに使ったりしてるのを耳にするんですが、そんな軽いノリで使ってほしくない曲ですねぇ。まったく。

このミュージカル自体見てないのでわかりませんが、このアルバムを聴いているだけでその舞台の移り変わりが頭に浮かびます。この死刑宣告の日のシーンが終わると一気に場面は時代を経て、20年後に彼が模範的な服務の末に出所を勝ち取って釈放される日をラテンギターの調べにのせて語ったI Was Born in Puerto Ricoが始まります。そして、サルバドールの生い立ちとプエルトリコ生まれのアイデンティティを高らかに歌い上げ、この空白の20年間をここで語ろう、という宣言をします。そしてその物語こそが、ミュージカル・ケープマンなのでしょう。

さて、アルバム上で物語がどう展開していくのか、長くなってきてしまったので、次回に続く。





posted by yossie at 10:50 | 東京 ☀ | コメント(0) | トラックバック(0) | Simon&Garfunkel
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