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2006年05月17日

メイキング・オブ・グレイスランド

メイキング・オブ・グレイスランド/ポール・サイモン
メイキング・オブ・グレイスランド/ポール・サイモン

ポール・サイモンの傑作アルバム、グレイスランドは偉大なアルバムであると言うことは誰もが認めるところであるとしても、それがどのように作られたかを本当に理解するのは難しいでしょう。アフリカの人種問題や政治闘争、国連のアパルトヘイトに対する隔離政策といった政治的背景、またはアフリカ音楽の探求・アメリカンロックとの融合という文化的背景に目が行き過ぎて、音楽製作そのものの素晴らしさにになかなか目が行かないけれど、これはほんとに音楽を知り尽くしたポール・サイモンの天才の偉業。その一端を、解き明かしてくれるのがこのDVDです。字幕に間違いが多すぎるのが残念だけど…。


プロデュースを手がけたロイ・ハリーの言葉がほとんどすべてを語っているといっていいでしょう。曰く、「(アフリカンミュージシャンとの)ジャムセッションを彼らの本領が発揮できる環境で行って、録音してきて、ニューヨークにもちかえって切り貼りした。」つまり、素材を新鮮なそのままに入手して、アメリカで解凍して料理したようなものだが、その料理法がすごい。

「ニューヨークで3小節とか4小節ずつ切り取ったり、くっつけたり、編集がしやすいように録音した」とは、つまり一方ではアフリカンミュージシャンたちに自由に演奏させるようにしておきながら、一方では後のことを考えてクリックを埋め込んだりシンクしやすいような形でビートを合わせさせたり、苦労しながら誘導していたんじゃないかと思います。普通あとから編集しやすくレコーディングするときは、あるテンポのクリック音を鳴らして、一人ずつ録音ブースに入って自分の楽器を演奏して、音を重ねていくものですが、「ちいさなブースに一人ずつ閉じ込めるのではなくて、みんながひとつの部屋でアイコンタクトをしながらジャムをさせた」ことで、アフリカ人の本領を引き出したんでしょうね。そうしておきながらあとからエディットをするということは、とても大変な工夫がいることだと思います。

これ、サンプリングの先駆けなんじゃないかな。今ではクラブミュージックを初めとして、もとからあるなんかの音を拾ってきてそれを自由に切り貼りしてループさせてリズムや曲を作ってしまうなんてことはざらに行われていますが、この当時に曲も書かずにアフリカのスタジオに行って録音をしてきた、というのは、今で言うサンプリングの素材を取りにいったとしか解釈できないですね。しかしコンピュータミュージックに使われるような無機質なループ音やフレーズを取って使うのではなくて、ロイ・ハリーの言うように「グルーブを録りに行って、それをもとに曲を書いた。」ということなのでしょう。

ポールがミキサーを前にしてThe Boy in The Bubbleを解説してくれる場面では、完ぺき主義者のポールらしい繊細な音作りもここで明らかになります。このDVDを見るまで、ここまでたくさんの音が重ねられていたことに全く気づかなかったぐらい、ほんとにたくさんの音が自然にひとつのサウンドを作り上げています。詳細はここでは述べませんが、感動もの。

ポールにとってグレイスランドはという曲は「大好きな録音作品だし、大好きな歌だ」(うーん、この辺の字幕はひどい。再発売されて改善されたのかな。「アルバムもタイトル曲も好きだ」なんて言ってないし、ゆったりした前奏を指して「独特の間だ」とか、「唯一の書き直し」なんて言ってない。『ここの歌詞、書いてるときに自分でいいなって思った』と言うのを「今の歌詞は感動的」というのは乱暴だと思う。)

エヴァリー・ブラザーズのボーカルを聞かせてくれる場面は楽しいです。ドンがポールと同じ主旋律をユニゾンで歌い、フィルがハーモニーをつけています。多くの単語を含んだフレーズでのハモリを満足のいくレベルまで合わせるのは大変だったようです。The Everly Brothers:Walk Right Backによると、ドンはポールに何度もやり直しをさせられたようで、もともと音楽的には天才肌のドンにとってあまり人の指図どおりに歌うのは得意ではなかったと見え、ポールに「普段飾りのパートはやらないんだよ、僕はリードシンガーだから」と言ったそうです。後のコメントでドンは「いいレコードだったけど、フィルほど僕は上手くできなかった。僕は自分の歌い方があって、フィルみたいに人にぴったりあわせて歌うと言う技術を持ってないんだ」としています。フィルの証言によると「ドンはBye Bye Loveを歌うときでも毎回違うんだ。だから毎回毎回こっちもそれにあわせようと必死。だから何年歌ってても飽きないんだね。」だそうです。

そのほかにもおもしろいエピソードたっぷり。いいドキュメンタリーですね。それにしてもリンダ・ロンシュタットの早口なこと…。







posted by yossie at 00:21 | 東京 🌁 | コメント(2) | トラックバック(0) | Simon&Garfunkel
この記事へのコメント
Yossieさん、お久しぶりです。これ貴重な映像ですよね。作者自ら、作品の絵解きをしてくれるんですから。

ご指摘のとうり、いまや一般的になったサンプリングの走り?みたいなことやってますが、ポールはS&G時代、Bookendsの「我が子の命を救いたまえ」の途中で、その先駆けっぽいことやってます。

短い間奏の部分でSounds Of Silenceの冒頭の1節が出てくるアレンジはサンプリングのご先祖様みただと思いませんか?
Posted by ひろみつ at 2006年05月27日 21:15
あー!そうでした。Save the Live of My Childがありましたね!

あれはいったいどういう意図で入れることになったんでしょう?音楽を聴き始めた頃は、あれ?なんで別の曲がここに重なって入ってるんだろう?不良品かな?などと真剣に心配しました(笑)
Posted by yossie at 2006年05月30日 22:10
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