Song Watermark > Simon&Garfunkel > Surprise その9

2006年06月14日

Surprise その9

サプライズサプライズ
ポール・サイモン


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いろんな方から意見を頂くと、いろいろ新しい面が見えて面白いですね。ほんと、ポール・サイモンはネタとしては面白すぎます。面白いので、ちょっと疲れてきたなぁと思いつつ、今日も書いちゃいます。皆さんついてきてますか〜?

最近のインタビューではあれだけ「直接政治的な歌はつくらないよ」と言ってるのに、結構つくってるじゃん?って気もする今日この頃。だけど、今回紹介するAnother Galaxyは政治とは明らかに無縁。ひょっとするとこの曲がいちばん、聴けば聴くほどじわじわと感動する曲かな。

やけ〜に長いイントロですよね。映画的なオープニングですよね。なんか映画の始まりに登場人物が出てくる前に、風景が流れていってタイトルがでてくるようなイメージ。歌が始まるまでに1分半もあるような曲ってポールにしてみたら珍しいんじゃないかしら。頭に浮いてくるイメージは、荒涼とした平原の一本道を一人旅の女性が車を飛ばしているところか。エレキギターがちょっと哀愁を漂わせて響くあたりが荒野のイメージでもある。いい具合にアコギが重なる。

On the morning of her wedding day
When no one was awake
She drove across the border
Leaving all the yellow roses on her wedding cake
Her mother's tears, her breakfast order

いきなり劇的なシーンを描き出してきますね。結婚式の当日の朝、彼女はだれもいない間に国境を越えて車でいなくなってしまうのです。

これは関係ありませんが、なんとなく「黄色のバラ」「花言葉」と検索してみると、けっこういろんな意味が出てきました。一番多いのは「愛」とか「嫉妬」、「不貞」なんてのもありましたよ。なんなんでしょうね(笑)。

There is a moment, a chip in time
When leaving home is the lesser crime
ごくわずかな瞬間だけど
家を出るほうが罪のない時がある


"lesser"は「より小さい、(罪が)軽い」という形容詞です。ふつうlessっていう比較級を使うんですよね。"less sinful"とかって。だけどここでは名詞を使って軽い罪だと言ってる。

みんなが思うよりも軽い罪だよ、と漠然と言うなら"a lesser crime"でもいいわけです。しかしここは"the lesser crime"です。つまり、この場合は比べる対象が頭の中にもうひとつあって、そのことよりもこっちのほうが罪のないほうだよ、と言いたいのです。じゃあ何のほうが罪があるのでしょう。

逆のことだとすれば、家にそのまま留まることですね。留まって、流されて生きること。自分の選択肢を捨てて、状況を受け入れてしまうこと。そっちにくればれば、罪がない。そんな気がするときがある。

When your eyes are blind with tears
But your heart can see
Another life, another galaxy

家を出て自分の道を選ぶなら、辛いときもあるけれど、心では別の生活、別次元の世界が開けるんだ、ということだと思います。よっぽど後悔の人生を送ってきたんだろうか(笑)、ポール。どっかでこのセリフっぽいのを聴いたことあるなぁと思い返してみると、

The thought that life could be better
is woven indelibly into our hearts and our brain
人生はもっと良くなれるはずだっていう考えが
心と頭の中に織り込まれて離れないでいる


っていうフレーズがHearts and BonesTrain in a Distanceのなかに登場してましたね。ずっとその考えが離れないんでしょうね。

That night her dreams are storm-tossed as a willow
She hears the clouds
She sees the eye of a hurricane
As it sweeps across her island pillow

はい、ここまた時制に注目!冒頭の逃亡シーンは過去形で、あきらかに過去の一転の出来事を指していたのに、今度は現在形になっています。ということは、彼女の一夜の出来事を指してると言うよりは、この段階になって心理的には彼女の普遍的な状態を説明しているようです。規定路線から逃げ出して、自分の道を選んだら、どういうふうになるか。

逃げ出した夜は、柳のように暴風に揺られるような夢を見る
嵐が枕を吹き抜けるとき
雲の音を聞きつけ
台風の目を見つける


大変な不安に苛まれるだろうということでしょうか。「台風の目」はYou're the Oneにも『ハリケーン・アイ』として出てきましたが、嵐の中でもはっとわれに返る静けさ、という意味でした。暗雲立ち込める中、台風の目で何を見つけるのでしょうか。

But she's gone, gone, gone
彼女はもうここにはいない

つまり、もう昨日までの結婚を受け入れようとしていた彼女はもういなくなって、新しく自分の生きる道を自分で選択して生きていこうとする彼女がいるのだと思います。いろいろな解釈がありそうな曲です。でも僕なりにイントロの雰囲気や、最後のエンディングの失踪感、ジャズギターの響きを聞いていると、こういう解釈をしたほうが自分としては納得が行く気がします。

それにしてもきれいな歌です。歌としては2バースしかないのに、スケールが大きくて。それにはサウンドの作り出す世界観が大きいですね。タイトルもいい。アナザー・ギャラクシー。







posted by yossie at 02:38 | 東京 🌁 | コメント(11) | トラックバック(0) | Simon&Garfunkel
この記事へのコメント
She hears the clouds
雲を聞くとは、気配がするということ?
それとも雲が湧く音がする?
Posted by こうもり at 2006年06月14日 12:39
英語的にはどっちにも取れると思うんですけど…
どっちなんでしょうね?柳を揺らすとか、ハリケーンとかいう言葉が前後にあるので、そうすると雲と言っても嵐の雲の音がする、心がざわめく、とかそういう意味の比ゆで書いてるのかなぁと感じました。
Posted by yossie at 2006年06月14日 19:18
she hears the cloudsの「雲を聞く」という箇所は、僕も不思議な表現だなと思ってました。その次にshe sees the eye of a hurricane「彼女は台風の眼を見る」と続くんですが・・・・。突然、暗雲のように湧き起こった不安を「暗雲を聞く」、それが疑いようの無い確信となったことを「台風の目を見る」と喩えてるんでしょうか?

このタイトル、最初は、ただ単に希望を意味しているのかなと思ってましたが、それなら別にNew WorldとかAnother Worldでもいいのに、何故?Another Galaxy(別の宇宙空間)なのかなとズッと思ってました。

このタイトルから、僕は希望どころか、虚無とか、恐ろしいまでの完全な孤独といった物を感じます。でも、メロディは優しく、どこか励ますような力強さもあるようで、「別の人生、別の宇宙空間」と言う1節は、The Boxerの「でも闘士は、いまもそこに留まっている」という1節を連想させる、徹底した孤独、絶望と背中合わせの希望も同時に語っているように思います。

ポールは、アーティのボーカルを入れることも考えたらしいけど、万一それが実現してたら、それは、この曲ではないかと思います。
Posted by ひろみつ at 2006年06月14日 19:58
変心
イヤ、私が、です(笑)

この歌、"she"のことを言っているように思えますが、
"When "your" eyes are blind with tears
But "your" heart can see"
と、サビの部分だけ"you"となっています。
ということは、
"Another life, another galaxy"
を見ているのは"she"ではなく"you"。
残された家族を指すのか、それとも彼女の家族が彼へ語っているのか.....
「家を出るほうが罪のない時がある」ということは、残された人たちにとって、彼女がいなくなってくれた方がよかったのか???

彼女の見た"夢"も不思議。
"that night"と見た日は特定しているけれど "dreams are"とその夜、何回も嵐の夢をみたようです。
が、"the clouds", "the eye of a hurricane" となっているから「雲」や「台風の目」も特定されているのですよね。彼女がこれらに何を見たのかはわかりませんが、彼女を突き動かした"きっかけ"となったことは確かだと思います。

このように、彼女が出て行ってしまった理由は彼女とこの歌の語り手にはわかっているけれど、残された人たちにはわからない。(寝ている間にいなくなってしまいましたからネ)それが、2回目の"she's gone, gone, gone"に"but"がついていることで表されているのかなぁ〜、と思います。

雲の音
嵐にはつきものの雷雲は、音がしますよね
>みなさま
でもこれは詩ですから、もっと観念的または感覚的なものだと思います。しかも夢の中の出来事ですから実際には音のしないものであっても、するかもしれません。あまり物理的・論理的に考えなくてもよいのでは。
Posted by うらうめ at 2006年06月14日 20:25
>この歌、"she"のことを言っているように思えますが、
"When "your" eyes are blind with tears
But "your" heart can see"
と、サビの部分だけ"you"となっています。

うんそうですよね。「彼女」はあくまで登場人物であって、歌のテーマになっている部分は広く一般にとっての意味になってます。

>でもこれは詩ですから、もっと観念的または感覚的なものだと思います。

はい。特にこの歌に関してはそんな気がしますね。いろいろ論理的に考えすぎちゃうのも僕の悪い癖だけど、なぜかそれが楽しかったりする(笑)

>ポールは、アーティのボーカルを入れることも考えたらしいけど、万一それが実現してたら、それは、この曲ではないかと思います。

ひろみつさん、僕もおんなじこと考えました。これが一番政治から遠ざかってるけれど辛口、ということでS&Gっぽいなと感じました。
Posted by yossie at 2006年06月14日 22:18
ポールのインタビューです。収録曲について語ってますが、Another Galaxyについても語ってます。ご参考までに。Bodoさんのサイトからです。

http://www.paul-simon.info/PHP/download.php?file=21_InterviewAllthings.mp3
Posted by ひろみつ at 2006年06月17日 15:34
こんにちは。
PINOです。
間違った解釈かもしれませんが、
私は、この歌に突然ですが「死」、それも「みずから選択した死」を感じました。
映画『卒業』の「逃走」とは異なり、この歌には、これから展開するであろう未知の未来への
憧れも、不安も感じられません。
透明で美しい悲しみにあふれています。
「彼女」は生を捨て、生を突きぬけて,
Another Galaxyを目の当たりにしている。
この歌は、いくどもShe is gone,gone,
goneとくりかえしています。
これは、彼女がはっきりと意志を以て「去った」ことを示していないでしょうか。
また、
There is a moment, a chip in time
When leaving home is the lesser crime
というフレーズにあらわれるcrimeという
強い表現は、
「神に裁かれるべき罪」の意味であって、
leaving home以下のフレーズは、「みずから死を選択する」
という神に背く行為が、より小さな罪であることも、ごく稀にあるといっているように思うのです。
たんなる家出以上の何かが、このフレーズからは
感じられます。

長い導入部も終結部にも、その思いが強く感じられます。
Posted by PINO at 2006年06月29日 10:28
を!、PINOさん
同じことを考えている人が他にもいた^^
「彼女」は死にに行った という解釈はちょっと不穏当なので控えていましたが、やはりそうですよねぇ〜〜
だから、残された人たちが心の中で見ていたのは、
「別の世界へ行ってしまった彼女」

Another Galaxy→AG→Art Garfunkel→恋人の死→Laurie Bird...... なんて、Artieファンにはちょっと酷な連想ですが、"Sure Don't Feel Like Love" なんて歌があったものだから、こんなことを思ってしまいました
Posted by うらうめ at 2006年06月29日 12:51
このアルバムを通じて、ポールはひとつのことを言っていませんね。一曲目のHow Can You...がその宣言ですが、人それぞれ人生に対する対処の仕方がある、多様なんだと。それでいうと、Once Upon a Time...のように一喜一憂しながら人生の様々な風に立ち向かって努力しようという人もいれば、この曲のように違う居場所を求めて今の人生から去る人もいる。

死を匂わせているのは、ひとつのレトリックなんだろうなと思います。見方によっては人に死に値するようなことも、当人にとってはひとつの転機だったり、幸せであったりすることを言いたいために、ここまで死のイメージを連想させるつくりをしてるような気がしますね。

>Another Galaxy→AG→Art Garfunkel→恋人の死→Laurie Bird......

すごい連想…(笑)。でもArt Garfunkelまでは結構連想してしまいますよね。
Posted by yossie at 2006年06月30日 00:52
私も、うらうめさんの
Another Galaxy→AG→Art Garfunkel→恋人の死→Laurie Bird......

の連想はすごいと思いました。

それにしても、サイモンの詩には、人生のいろいろな局面での「事件」が重層的に語られ、事件が互いに作用しあい、展開を複雑で深いものにしている。詩の言葉はいつも具体的で、
いわゆる「一般論」や「教訓」めいたものがないところも、見事であると思います。
Posted by PINO at 2006年06月30日 15:36
>詩の言葉はいつも具体的で、いわゆる「一般論」や「教訓」めいたものがないところも、見事であると思います。

だから嫌味が無くて人気があるんでしょうね!解釈は読者に任されているから、自分の立場によってすごく親近感のわく曲になり得やすいし。
Posted by yossie at 2006年06月30日 17:23
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