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2005年08月11日

Hearts and Bones その3

はい。間が開いてしまいました。その間にずいぶんこのアルバムについて考える機会があったんですけど、やっぱり考えても考えてもこのアルバムって、こういうアルバムだ、っていう言葉が思い浮かばない。不思議な作品ですね。さて、今回で残り5曲を一気に行ってしまいましょう。

Think Too Much (a)は(b)とうって変わって、軽いノリのちょっと華やかなナンバー。ですがあんまり僕は面白いとはいえないです。冒頭から登場するキャッシュレジスターのような音は人間の社会活動の象徴としての「計算」でしょうが、少年時代から育った環境を述べつつ、最後には結局ぐだぐだ言ってないであの娘をゲットしなきゃ!とはいかにもポールらしくない気がします。

さあ、気を取り直して!ここから2曲がこのアルバムのハイライト。まずは何もかもが美しいTrain in the Distanceです。明らかに自伝的な歌ですが、冒頭の「出会った夜の彼女は南部の空のように美しかった」という絶妙な一行から幻想と現実の入り混じった物語がスタートします。そこから強固な決心の元に彼が彼女と結ばれるまで、その過程はまったく説明されません。そこにはただ「遥かなる汽笛」の描写が挿入されるだけ。

そして結婚した二人はやがて子を設け、そして忙しさの中から不仲に陥ります。その過程も淡々と説明されるだけで細かい話しはありません。ただもう一度「遥かなる汽笛」を聴かせます。二人が別居して子供のためと称して会うようになるまでもさらっとした描写。そしてまた「みんな、遠くから聞こえてくる列車の汽笛が好きなんだ」とは、やはり物事に対する人々の抽象的な捕らえ方が人生を狂わせることもある、というメッセージなのでしょう。実際に近くに行ってその列車を見ようとは誰も思わない。ポールの美しいコーラスが、ひたすら「遥かなる汽笛」を美しいものとして描写していますが、実際には「人生ってもっといいものであるはずだ」という考えが絶えず付きまとってしまう…。

Rene and Georgette Magritte with Their Dog After the Warは読者限定の回顧録のようなもので、はっきり言ってこの曲にきちんと反応できるのは50年代のアメリカを実体験していたネイティブだけなんでしょうね。それでも、なんだかノスタルジーを感じさせるゆったりとした流れと切なさがいい。

Cars Are Carsはよくわかりません。なんでこの曲がこのアルバムに入ってるんでしょう。この曲があるないでおおきくこのアルバムの印象が変わると思うんですが…。無機質な機械であるはずの車にすごく愛着を持つことがある、家庭だってもっと愛着の持てるものであれば、こんなに遠くまで旅をしてこなかっただろうね。って、言うのはわかるんですけど、なんたって曲調が単調でひねりがなさすぎ。ポール・サイモンの作品の中でもっとも聴かない一曲です。

最後を締め括るのがLate Great Johnny Aceです。この曲だけ、妙に気合が入りすぎ(笑)。クレジットだけ見てもぜんぜん力の入れようが違うのが分かりますが、この曲自体も、アルバム全体像を分からなくしているひとつの大きな要因です。アメリカの暴力について歌われたとされる曲ですが、ジョニー・エースがなくなったのは1954年と歌われてますが、81年のセントラルパークでは1956年だったかな?あのときにジョン・レノンが暗殺されて殺されたというくだりを歌ったときにステージに暴漢があがってポールに詰め寄った場面、なんだかよく出来すぎてて演出なんじゃないかとさえ思えてしまう(笑)。

一つ一つの曲はすばらしいものが多くても、アルバムとして通して聴いたときにものすごく不安な感じと不安定感をもってしまうのであんまり通して聴いたことはないです。でもまちがいなくポール・サイモンの傑作ですね。

うーん、大好きなアルバムなのに、なんでこんな解説になってしまうんでしょう。






posted by yossie at 12:02 | 東京 🌁 | コメント(3) | トラックバック(0) | Simon&Garfunkel
この記事へのコメント
Yossieさん、演奏オフではスマートな司会進行ご苦労様でした。堂に入ってましたよ。

ところで、このアルバムは、全体にムラがありますね。深刻なスランプから抜けつつあったこともあって、それがアルバムに如実に出てるような気がします。快復してきたけど、まだ本調子じゃない、そんな印象を受けます。冒頭のAllergiesなんか、リハビリを兼ねて作った曲みたいな印象があるんですが、どうでしょうか?

駄作はないけど、傑作と凡作の入り混じった佳作といったところでしょうか。
Posted by ひろみつ at 2005年08月16日 16:18
このアルバムの製作って、急がれていたんですかねぇ?もう少し時間をかけて作ったほうがよかったんじゃないかって気もします。どの部分をポールが作ったんだろう?っていうしてんで見るのも面白いアルバムかも(笑)
Posted by yossie at 2005年08月19日 00:14
急遽、S&Gの新作になりアートが参加して、この二人には初めて納期が設定されたらしいですね。焦らされたのも空中分解の要因の一つかなと思います。
Posted by ひろみつ at 2005年08月19日 10:45
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