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2005年09月04日

レフティー

レフティー / アート・ガーファンクル
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マリファナというのはある意味アメリカ文化と切って切れないところがあって、それ自体の良し悪しは日本人には判断できないけれど、アート・ガーファンクルに日本のファンが期待していたのはそういうアメリカの不良っぽさや未熟な側面から離れた、純粋さ・純朴さだったと思う。残念なことに2度目が起こってしまいましたが、今日は僕の誕生日、アーティのアルバムを取り上げてみましょう。

結論から言うと、このアルバムはアート・ガーファンクルのヴォーカルが天使の歌声としての神通力を発揮した最後のアルバムだと思います。従来どおりの美しさと、そして新たにみせた力強さがこの作品では発揮されていて、やりようによってはもっといいアルバムが作れたんじゃないかとも思いますが、ともあれある意味アーティのアーティストとしてのアルバムに仕上がっています。

もしこのアルバムが生のピアノとギター、そしてベースだけで支えられたアルバムだったらとてつもなく素晴らしいヴォーカリスト作品になってたんじゃないかと思います。どうしても時代がシンセを使わせてしまう、この頃の作品にはそういう惜しいものがたくさんあるような気がします。

アーティは今までにない力強いボーカルをまず冒頭のThis is the Momentで聴かせてくれます。このサウンド、プロデュースがジェイ・グレイドン、シンセがデヴィッド・フォスターとくれば、Airplayですよ。モロ。彼らが書いてEarth, Wind & FireがヒットさせたAfter The Love Is Goneそのものの香りがしますね。そこに作曲ではシンシア・ウェイルが加わっています。なにこれ?急に何がおきたの?って感じですよね。すごいメンバーです。楽曲の出来もアーティの曲にしてはパワフルでいいですね。これは個人的な趣味ですけど、歌詞がちょっと女々しい感じなのがざんねん。

続くI Have a Loveはドラマティックなデュエットソング。とてもシンプルなメッセージに巧みなヴォーカルワークが光ります。デュエットしているリア・カンケルはウォーターマーク以来の長い付き合いになるAOR界ではおなじみの存在で、アーティの中性的な危ういヴォーカルとぴったり合ってますね。

This is the Momentと同じセッションで録音されたと思われるのがSo Much In Loveで、アルバムの中では浮いている存在だし本人もあんまりこの曲を録音することには乗り気ではなかったんじゃないかと想像できますが、出来は過去の同曲の様々なヴァージョンと比べてみてもかなりいいんじゃないでしょうか。おそらく一番ヒットしたのはティモシー・シュミットのヴァージョン(Playin' It Cool収録)でしょうが、歌詞の世界観からくる軽さ、楽しさ、なによりも恋の盲目度はアーティのバージョンのがいいかな。ティモシーのバージョンのようにアカペラで取り上げられることも多く、ヒューイ・ルイス&ザ・ニュースあたりもライブのレパートリーにしていました。

アーティのバックボーカルを固めているコーラス隊の中で、特筆すべきがクリフ・マグネス。デヴィッド・フォスターらと結成したPlanet 3のメンバーで、シンガーソングライターとしてもそのポップなセンスで脚光を浴び、今となっては全米を代表するプロデューサー。アヴリル・ラヴィーンも手がけていますね。彼のハイトーンヴォイスのファンも多いはず。

Slow Breakupでスティーブン・ビショップが登場。この曲はビショップらしいですねぇ。このアルバムには特に多いパターンですが、前半静かに始まって後半ものすごくドラマティック。どうやらギターを弾いてるのは違う人のようですが、曲の終盤のコーラスでははっきりとスティーブン・ビショップの声が聞こえてきますね。

このアルバムの中で際立った存在なのがLove is the Only Chainと言う曲で、ミディアムの変調ロックビートに、ハーモニクスを随所に取り入れたギターカッティング、そこにアーティの多重ボーカルワークを中心に進行していく、なかなかファンキーな一曲。かっこいい。アーティの曲の中で、聴きながら体を動かして踊りたくなる曲って、僕にとってはこれひとつだけ。そのくらいいいリズムだな。曲の歌いだしのところ、アーティの年輪を重ねた渋さがでてませんか?そしてサビでは声もものすごく伸びていてエネルギーを感じます。そして歌詞もストレートでいい!

君の愛が星のように光る
僕が道に迷えば
君の光が僕を導いてくれる
君の愛こそが僕の命綱なんだ

で、なにものにも欠点と言うものはある(笑)。When a Man Loves a Woman『男が女を愛するとき』はアート自身も大好きな歌25位としてあげているパーシー・スレッジの曲だが、ここで取り上げるべきじゃなかったと思う。練り上げてる時間がなかったのかな。アーティのボーカルは終始控えめで、オリジナルの迫力はまるでない。ばかりか間奏に入る尺八がこのアルバムに全然合わない。シンセの音が包み込む中でなぜ尺八が?このトラックさえなかったらもっとこのアルバムを聴いていただろう。そう思います。

次のI Wonder Whyは珠玉のデュエットですね。ナイロン弦のギターサウンドと軽やかなパーカッション。流れ落ちるような満天の星空の平和な南の島の風景みたいなものが浮かびます。。ケニー・ランキンのヴォーカルはどこかジェームス・テイラーと通じるものがあるけど、この人の音楽性は本当に広くて、あらゆる音楽をマスターしてるんじゃないかと思わせる天才ですね。もともとケニー・ランキンはスティーブン・ビショップと同列のシンガー・ソングライターとして讃えられていたし、ビショップの曲をカバーしたりしてました。このアルバムが発表された数年後には二人で来日公演を行ってます。

そう言えばスティーブン・ビショップはアーティに曲を取り上げられることでビッグになりましたが、彼をアーティに紹介したのがリア・カンケルでしたね。そのビショップ作品King of Tongaはとても変わった作品ですが、このアルバム中で絶妙のスパイス。ビッシュ自身もBLUE GUITARSでセルフカバーしてます。アーティの頭から突き抜けていくような歌いっぷりが印象的。続くIf Love Takes You Awayもスティーブン・ビショップならではのポップソング。こういう純真なラブソングを書くのがとってもうまいですね。スティーブ・ガッドかな、ドラムをたたいてるのは。よく聴くとスネアの音がとってもガッドっぽい気がしますが。

最後に難しいひと癖ある曲を持ってくることが多いアーティ。The Promiseもそんな曲ですが、これはとてもいい曲ですね。珍しいロートーンボイスで歌われており、しみじみとしていますが、歌詞もスケールが大きく、じっくり味わいたい一曲。

こうしてみると、アーティを囲んできたたくさんの人が一緒に作ったアルバムですね。でも彼自身がしっかりと歌っているから、アーティ自身のアルバムとして仕上がっている。こういうアルバムをもっともっと作ってほしいものです。





posted by yossie at 12:30 | 東京 🌁 | コメント(7) | トラックバック(0) | Simon&Garfunkel
この記事へのコメント
個人的には、BreakawayとFate For Breakfastの両方のテイストを持ったアルバムという印象があります。最初はDare、そしてHeart Of The Gameとタイトルが変更になって、最終的にこのタイトルに落ち着いたらしいですね。

最初は8曲で完成したけど、「地味すぎる」というコロンビア側の注文がつき、急遽This Is The MomentとSo Much In Loveを収録したそうで、アートはすごく不満だったんですよね。前者は、ちょっとシンセがでしゃばり過ぎかなと思います。もっとも、80年代は、ほとんどのミュージシャンがシンセやシンセドラムを使用してましたが。

校舎は、とてもいい感じで僕は好きです。また、この曲のビデオクリップがまた美しくて良いのですよ。ちょっと散漫な印象のあるアルバムですが、曲はかなり捻った、アヴァンギャルドなのもありLove Is The Only Chainなどはカッコよくて不思議なアレンジですね。「男が女を愛する時」・・・・これは、いけません(笑)あの尺八みたいなフルートはいくらなんでも。唾がこっちに飛んできそうな気がしました。

でも、いい曲も多くて、I Wonder Whyなどはアルバム中のベストトラックで大好きです。数年前、大阪でやった演奏オフで僕はこれを演奏しました。ギター一本でやってもいい感じの曲ですよ。ケニーランキンとのデュエットも相性バッチリでしたね。この曲でのアートのハーモニーアレンジって凄いと思いませんか?ラストのPromiseも味わい深いですね。
Posted by ひろみつ at 2005年09月06日 10:59
Heart of the Gameっていうタイトル、いいですよね。追加された二曲は、アーティ以上にセッションミュージシャンの色が濃いですよね。ボーカルはさすがだと思いますが。「男が女を愛するとき」これだけは抜いてほしかった…(笑)。Love is the Only Chainは、ホント好きです。いい曲だと思いますよ。

ひろみつさん、I Wonder Why、いつか一緒にやりましょうね。

ところでこのアルバムのインナージャケットに書かれている散文詩って、Still Waterの一節?別の詩集かな…。
Posted by yossie at 2005年09月07日 00:22
遅くなりましたが、お誕生日おめでとうございます。(私と一週間違いです。)
レフティのお話、楽しく拝見しました♪それだけでもはしゃいで、つい書き込みに参りました。

最近、お気に入りアート自家製MD第3弾を作って悦に入っております。(まだMDで満足)
レフティからもお気に入りに4曲入れました。
というか、アーティなら何でも喜ぶ傾向があるんですが、さすがに「男が女を愛するとき」はあの間奏のアレンジがね。(笑)
何度も繰り返し聴くのはちょっと・・・
Posted by GACHA at 2005年09月10日 00:31
アリガトウございます(TдT)
おとめ座仲間ですかね?

僕も5年前に作ったアーサーの(こう言うと新鮮?)CDがありますが、今選ぶとしたら絶対選ばないだろう曲が結構入ってて面白い(笑)。なにせ一曲目が『明日に架ける橋』。これは今じゃあり得ない。でも逆にこの辺は不変かな↓

Can't Turn My Heart Away
Miss You Nights
Beyond the Tears
Crying in My Sleep
Break Away
Lasso the Moon
Posted by yossie at 2005年09月10日 01:48
アートのアルバムの出来不出来は、参加してるミュージシャン、プロデューサー、そして歌、この3者との微妙なバランス如何にかかってると思います。

Leftyは、それが如実に実感できる典型的な作品で、Breakawayのリチャードペリーやピーターアッシャーがプロデュースしてたら大傑作になってたように思います。いい曲もあるんですが、全体に斑のあるちょっと残念な作品だなと思います。

Yossieさん、I Wonder Whyは傑作でっせ。いつか一緒に歌いたいですね。僕は普段ノーカポのCか2カポのCで歌うんですが、Yossieさんのキーは?
Posted by ひろみつ at 2005年09月10日 13:50
>ひろみつさん
2カポのCがいいですかね。
それがオリジナルですよね?なんかこの歌、このキーでアーティのパート歌うとむちゃくちゃ気持ちいいです!
Posted by yossie at 2005年09月12日 01:19
>2カポのCがいいですかね。それがオリジナルですよね?なんかこの歌、このキーでアーティのパート歌うとむちゃくちゃ気持ちいいです!

確かそうです。後半、間奏の後、転調するんですがそれがまたええんですわ。このアルバムと同じ年に出たケニーランキンのアルバムの最後にSpecail Thanksとしてアートの名前がクレジットされてます。ジミーウェッブの歌を歌ってるのでその関係かな?
Posted by ひろみつ at 2005年09月13日 19:22
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